漢方で*赤ちゃん迎える院長blog

ハイボールは、お好きでしょう♪♪~2.妊娠との密接な関係‥‥『冷えのぼせ』と『腎虚』

さて、前回に続き、『冷えのぼせ』のお話です。

前回、冷えのぼせの症状で『寝相』のお話をしましたが、『冷えのぼせ』の他の特徴的な症状として、“自分が暑がりか寒がりかよく分からない“と訴える人がいます。

冬、デパートに入ると、足先下半身は冷えたままだが、上半身は汗をかき頬が火照り、顔が赤くなる。

冬、外から帰り部屋が寒いので暖房を付けると足先は冷たいままだが、頭が火照り上半身も汗をかくので直ぐにスイッチを切り、ON╱OFFが忙しい。

冬、外では寒いからコートを着てマフラーをしているが、電車や暖房の効いた室内に入ると直ぐに上半身が暑くなり、脱がないと汗をかいて、冷えて風邪を引く。

以上のような症状も 『冷えのぼせ』の現れです。ただし、冷えの状態には個人により程度の差があるので、全ての症状が現れる訳でもありません。また『上熱下寒(じょうねつかかん)』という言葉が漢方にはありますが、人間の身体は暖かいものは上に向かい、冷たいものは下に向かうという意味です。それによって体内の熱のバランスを保とうしているのです。

そして、漢方には『腎虚』という言葉があります。この『腎虚』の状態の時に現れるのが『冷えのぼせ』です。

普通は腎というと腎臓ですが、漢方では内腎(腎臓)・副腎・外腎(泌尿器生殖器)を含めて広い意味で腎といいます。そして、五臓(肝・心・肺・脾・腎)の中で真っ先に老化するのは腎であり、それ故にアンチエイジングの基本は腎の力を保つことにもなります。(『アンチエイジングと卵子の老化』のブログ参照)

『腎虚』には『腎陽虚』・『腎陰虚』・『腎両虚』があり、アンチエイジングはこの『腎虚』の状態を改善することでもあります。

『腎虚』のことは、よくお風呂🛀のお湯と火の関係で例えられます。お風呂のお水の事を『腎水』といい、火の事を『命門の火』といいます。『腎水』は『腎陰』、『命門の火』は『腎陽』とも考えられます。

例えば、この『腎水(腎陰)』要するにお風呂のお水と『命門の火(腎陽)』が釣り合った状態なら、ちょうど良い湯加減😌♨️で、文句は出ません。

しかし、このお風呂🛀のお水(腎水)が何らかの原因で減ってしまい、かつ『命門の火』が保たれると、お風呂で云えば空焚き状態になり、先程の困った状態が多々出現するのです。この状態が『腎陰虚』です。

『命門の火』は年齢と共に火の力が衰えますが、不妊症の患者さんの多い当院では、患者さんは比較的若く、この『腎陰虚』タイプが多いのだと思います。この様な患者さんには『腎水』を増やす『六味地黄丸料』を処方します。この『六味地黄丸料』で『腎水』を増やすと、『腎陰』と『腎陽』の釣り合いが取れてきて『虚熱』が生じなくなります。そして、先程の不安定な状態が改善され、不自然な症状もなくなるのです。

『腎虚』の状態が改善されるということは、冷えからくる「虚熱」が生じなくなるということです。ですから「虚熱」の症状である『口渇』や『口乾』がなくなり、冬の冷たい飲み物が減り夏のリップも必要なくなります。また、寝る時の手足の火照り感も取れて寝相も良くなり、冬の踵のカサカサも改善しやすくなります。

ただし、この『腎陰』と『腎陽』はあくまでも相対的な関係なので、男女問わず年齢には関係なく現れるものでもあります。つまり、『腎陽』も減るが『腎陰』がそれ以上に減ると『腎陰虚』の病態に陥るのです。

『腎陽虚』は、本性なら存在する病態なのですが、臨床上では『腎陰虚』を伴い、『腎両虚』を呈する事がほとんどです。それ故に、用いる処方は、先程の『六味地黄丸料』に『命門の火』の火力をupするための「桂枝」と「ブシ」の2味を加えた『八味地黄丸料』を用います。ただし、夏の時期は「桂枝」や「ブシで」で余計に体を温めてしまうので、『六味地黄丸料』を用いたりします。

いつも、患者さんには不妊の原因は、漢方でいえば『冷え』と『瘀血』と話しています。そして、この『冷え』には、「表面の冷え」と「深部(内面)の冷え」があり、それらを同時進行で治し腎の力を高めることが、妊娠・出産には大切なことだと話しています。

さて、次回は「ホットヨガ」と妊活の関係です。『私、ホットヨガが合わないの~』と言う患者さんがいます。これも『冷えのぼせ』と『腎虚』、そして深部の冷えの話が絡んでいます。

乞うご期待

寺師 碩甫