漢方で*赤ちゃん迎える院長blog

表面の冷えと内面(深部)の冷え-5~体の芯の冷えを治して妊娠力を高めることが大切

前回までは、冷えのぼせの症状で 寝相が悪い。口乾・口渇や睡眠中手足が火照る。“自分が暑がりか寒がりか分からない”などの話をしました。

ただし、冷えのぼせの状態には個人により程度の差があるので、全ての症状が現れる訳でもありません。また『上熱下寒(じょうねつかかん)』という言葉が漢方にはあります。人間の身体は暖かいものは上に向かい、冷たいものは下に向かうという意味です。特に実熱以上に虚熱ではその傾向がでやすく、それゆえに冷えのぼせの症状も出やすいのです。

そして、漢方には『腎虚』という言葉があります。『腎虚』では虚熱が生じやすく、このために、冷えのぼせの症状が現れるのです。

さて、普通は腎というと腎臓ですが、漢方では内腎(腎臓)・副腎・外腎(泌尿器生殖器)を含めて広い意味で腎といいます。そして、五臓(肝・心・肺・脾・腎)の中で真っ先に老化するのは腎であり、それ故にアンチエイジングの基本は腎の力を保つことにもなります。(『アンチエイジングと卵子の老化』のブログ参照)

『腎虚』には『腎陽虚』・『腎陰虚』があり、アンチエイジングはこの『腎虚』の状態を改善することでもあります。

『腎虚』のことは、よくお風呂🛀のお湯と火🔥の関係で例えられます。お風呂のお水の事を『腎水』といい、火の事を『命門の火』といいます。『腎水』は『腎陰』、『命門の火』は『腎陽』とも考えられます。

例えば、この『腎水(腎陰)』要するにお風呂のお水と『命門の火(腎陽)』が釣り合った状態なら、ちょうど良い湯加減😌♨️で、文句は出ません。

しかし、このお風呂🛀のお水(腎水)が何らかの原因で減ってしまい、かつ『命門の火』が保たれると、お風呂で云えば空焚き状態になり、先程の困った状態が多々出現するのです。この状態が『腎陰虚』です。

『命門の火』は年齢と共に火の力が衰えますが、不妊症の患者さんの多い当院では、患者さんの年齢層は比較的若く『命門の火』が保たれており、この『腎陰虚』タイプが多いのだと思います。この様な患者さんには『腎水』を増やす『六味地黄丸料』を処方します。この『六味地黄丸料』で『腎水』を増やすと、『腎陰』と『腎陽』の釣り合いが取れてきて『虚熱』が生じなくなります。そして、先程の不安定な状態が改善され、冷えのぼせの症状もなくなるのです。

『腎虚』の状態が改善されるということは、冷えからくる「虚熱」が生じなくなるということです。ですから「虚熱」の症状である『口渇』や『口乾』がなくなり、冬の冷たい飲み物が減り夏のリップクリームも必要なくなります。また、寝る時の手足の火照り感も取れて寝相も良くなり、冬の踵のカサカサも改善しやすくなります。

ただし、この『腎陰』と『腎陽』はあくまでも相対的な関係なので、男女問わず年齢には関係なく現れるものでもあります。患者さんの中にも火照り以上に冷えの訴えが強い人には『腎陽虚』とみなして『八味地黄丸料』を処方します。

ここで、『腎陽虚』は臨床上ではほとんどの場合『腎陰虚』を伴うので、正確にいうと『腎陰陽両虚』の状態といえます。それ故に用いる処方は、先程の腎水を増やす『六味地黄丸料』に『命門の火』の火力をupするための「桂枝」と「ブシ」の2味を加えた『八味地黄丸料』を用います。ただし、夏の時期は「桂枝」や「ブシで」で余計に体を温めてしまうので、『六味地黄丸料』を用いることもあります。

いつも、患者さんには不妊の原因は、漢方でいえば『冷え』と『瘀血』と話しています。そして、この『冷え』には、「表面の冷え」と「深部(内面)の冷え」があり、それらを同時進行で治し腎の力を高めることが、妊娠・出産には大切なことだと話しています。

さて、次回は「ホットヨガ」と妊活の関係です。患者さんの中にはどうしても「ホットヨガ」が苦手という人がいます。以前にもblogで取り上げましたが、これも『冷えのぼせ』と『腎虚』、そして『深部の冷え』の話が絡んでいます。妊娠力を高めるには大事な話なので、もう一度書いてみたいと思います。

寺師 碩甫

寺師 碩甫

玄和堂診療所の院長。1983年、東海大学医学部卒、東京逓信病院麻酔科、呼吸器科を経て、88年から玄和堂診療所勤務。プロフィール詳細

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