[vol.11]精子減少症で顕微授精3回、夫婦で服用し自然妊娠
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初診・出産年齢・服用期間

妻 41歳
夫 45歳

42歳

妻 11か月
夫 11か月
初診前の状況について
夫の精子の状況から顕微授精でないと妊娠は難しいと言われ、人工授精3回、その後顕微授精を行って3度目の移植で妊娠しましたが、7週で流産。その2日後に来院されました。
診療と診断
妻は、身長162cm、体重54.5kgで中肉中背。月経は順調。掻爬手術直後のため心身回復を目標に加味逍遥散を投与しました。4週間後の来院時の腹診では、胸脇苦満、左瘀血圧痛、ガス腹を認め、お腹は張っていて硬い状態でした。性交痛があり、冷え症です。これらを鑑み、折衝飲を処方し、体重を3kg 減らすよう話しました。折衝飲を1か月服用後、ガスは大分解消しましたが、冷房での冷えを訴えたため、当帰四逆湯と折衝飲を1日交互での服用としました。冷えに附子、気滞に香附子、蜀椒を増減するなどして投与。これを8カ月服用しました。基礎体温表は、高温相が安定し、移行期がわかるようになりました。
服用を始めて約11か月後の来院時に「自然妊娠しました」と報告を受けました。妊娠初期には流産予防のため、芎帰膠艾湯を服用、20週から出産直前までは当帰芍薬散料を服用して、無事男児を出産されました。また、出産後には母乳分泌を促す蒲公英湯を6ヵ月ごろまで服用されました。
夫は、身長175cm、体重76kg。精子数は問題ありませんが、量が少なく運動率、奇形率に問題があるので改善したいとのことでした。腹診すると、臍下不仁で腎陰虚。腹証より六味地黄湯を投与し5か月服用。その後、胸脇苦満、瘀血圧痛点を認めたため、前方に加え大柴胡湯合桂枝茯苓丸料を投与し交互の服用としました。同2処方を妻の妊娠まで服用されました。

治療のポイント

夫の精子に問題があるため、顕微授精でないと妊娠が困難と言われたご夫婦です。来院時、奥様は流産直後でしたので、まずは体調回復のために加味逍遥散を投与しました。その後は、折衝飲で瘀血とガス腹を解消し、当帰四逆湯で冷えを改善。これらの処方で血液の流れがよくなり自然妊娠に至ったと考えます。また夫の精子を妊娠前後に検査しているわけではないので、数値的に改善できたかは不明ですが、六味地黄湯で腎虚が改善され精子の質が向上したのではないかと考えます。
処方した漢方薬
妻: 加味逍遙散・
折衝飲・ 当帰四逆湯・ 大柴胡湯合 桂枝茯苓丸料
夫: 六味地黄湯・
大柴胡湯合 桂枝茯苓丸料

更年期の薬で良く知られていますが、
本来は気血水を整え戻す薬です。
流産後や産後の体調回復にも用いられます。

駆瘀血剤の代表的な漢方です。
瘀血があり、お腹が張りやすい人に。

しもやけがよくできる、冷え性の人に。
血流をよくし、身体を温めます。

大柴胡湯と桂枝茯苓丸料を合わせた薬です。
体力のあるかた太りの人に。

当診療所では、おひとりおひとりの体質や状態に合わせて、生活習慣や食事、服装などの詳しいアドバイスも行っています。あなたの今の健康状態を丁寧に評価し、それに基づいてオーダーメイドの漢方処方を行います。症状が似ているからといって、市販の漢方薬を安易に服用するのは危険ですのでくれぐれもご注意ください。初診のご予約はオンラインでもお電話でも結構です。お電話でもお気軽にご相談ください。

