初診・出産年齢・服用期間

41歳


43歳


1年6か月

初診前の状況について

この方は、人工授精6回、体外受精を2回行いましたが、採卵できたのは1回のみで、受精卵まで育たなかったといいます。検査では、卵管、フーナーテスト、ホルモン値など特に異常はなく、原因不明の不妊です。冷え性を改善し、血の巡りをよくして自然妊娠したいと来院されました。

診療と診断

身長161cm、体重49kgと中肉中背。月経は順調。腹診すると左右の瘀血圧痛点を認め、ガスでお腹が突っ張って硬く、性交痛もあるといいます。腹証より折衝飲を投与しました。体重自体は問題ないのですが、お腹に脂肪がついているので、お腹体重を減らすように話しました。
1か月服用後、お腹回りはスッキリとし、左の瘀血は少し残っていますが右の瘀血は消失しました。鼠径部の突っ張りがあるため、折衝飲と当帰四逆湯の2処方を投与しました。2か月後、性交痛はほぼ改善したので、末端の冷え、鼠径部の突っ張りをポイントに当帰四逆湯単方としました。同薬方を半年服用後、ガス、鼠径部の突っ張りもなくなり、お腹はふっくらとしてきました。腹証より当帰芍薬散料に変方しました。マラソンやテニスをして代謝をあげ、冷えの改善に努めているとのことでした。
当帰芍薬散料を約2か月服用後、顕微授精を行いましたが化学流産でした。月経はガタガタになり、その後の採卵(未成熟卵)で体調を崩しました。再び瘀血、ガス、お腹のかたさが認められたため、折衝飲に戻し、2か月ほど服用し解消しました。その後は当帰四逆湯、当帰芍薬散料の2処方とし、約3か月服用後、顕微授精卵を戻して妊娠されました。この間、体を温める附子、補腎作用の熟地黄、気を巡らす香附子などを、その時々の証に合わせて加味し投与しました。その後は順調に経過し、男児を出産されました。

治療のポイント

体外受精や顕微授精などの高度生殖医療を受ける場合も、まずは妊娠できる母体づくりをしてから生殖医療に望むのがベストと考えています。瘀血や冷えを改善することは一朝一夕にはいきません。腹証に従い投与された薬をのみ続ける努力と、食事、運動などの養生生活が大切です。特にホルモン剤などでバランスが崩れてしまった場合には、母体づくりにはより時間がかかります。

処方した漢方薬

折衝飲

折衝飲せっしょういん

駆瘀血剤の代表的な漢方です。
瘀血があり、お腹が張りやすい人に。

当帰四逆湯

当帰とうき四逆湯しぎゃくとう
(当帰四逆加呉茱萸生姜湯とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)

しもやけがよくできる、冷え性の人に。
血流をよくし、身体を温めます。

当帰芍薬散料

当帰とうき芍薬散しゃくやくさんりょう

体が弱く貧血気味の人に。
血を補い、水毒をとり、胃の働きを促します。
流産止めにも用いられます。



当診療所では、おひとりおひとりの体質や状態に合わせて、生活習慣や食事、服装などの詳しいアドバイスも行っています。あなたの今の健康状態を丁寧に評価し、それに基づいてオーダーメイドの漢方処方を行います。症状が似ているからといって、市販の漢方薬を安易に服用するのは危険ですのでくれぐれもご注意ください。初診のご予約はオンラインでもお電話でも結構です。お電話でもお気軽にご相談ください。