男性不妊とは

WHO(世界保健機関) によると、避妊をせずに通常の性行為を行っているカップルが1年間妊娠しない状態を「不妊」と定義しています。不妊という言葉を聞くと、多くの人がすぐに「女性側に原因があるのでは?」と考えがちですが、実際には男性側に起因するケースも少なくありません。そして、男性不妊とは、男性側に何らかの原因があって妊娠が成立しないことを言います。


不妊の原因

WHO による統計では、不妊に悩むカップルのうち、男性のみに原因があるもの24%、男女ともに問題があるもの24%、女性のみに原因のあるもの41%、原因不明11%というデータがあります。これらのデータから、約半数(48%)のカップルにおいて男性側にも不妊の原因があることがわかります。つまり、男性不妊は決して少数派の問題ではなく、多くのカップルにとって重要な要素となっています。

※こども家庭庁:妊娠・不妊の基礎知識【不妊の原因】参照

男性不妊の定義

男性に行われる不妊検査に精液検査があります。この検査で、精液の中に精子がない無精子症、精子の数が少ない乏精子症、運動率が悪い、奇形が多いなど、男性側の不妊の原因が明確になります。西洋医学の薬物療法での改善例も多く、無精子症の場合は顕微授精などで妊娠に結びづけることも可能です。

WHO では、正常な精子について次のように定めています。

  ・精液量1.4ml以上
  ・濃度1600万/ml以上
  ・運動率42%以上
  ・正常形態率4%以上
  ・生存率54%以上

※WHOマニュアル第6版「ヒト精液の臨床検査と処理」より



この数字に当てはまらない場合に「男性不妊」と呼ばれます。

男性不妊の漢方治療

八味地黄湯

漢方でも、精子の数を増やしたり、運動率を上げたりする治療が可能です。男性不妊の原因も、漢方では『腎虚』にあると考えます。腎虚の代表的な薬が「八味地黄湯(はちみじおうとう)」です。八味地黄湯は腎虚の一番の薬であり、気・血・水のすべてを補い、気力、精力の衰えを改善します。性欲の減退や、ED(勃起不全)にも効果があります。
ただし、八味地黄湯には、胃に負担のかかる地黄が含まれているため、胃の弱いタイプの場合には、まず胃腸を丈夫にする薬を処方します。

また、ストレスの多いタイプには、気の流れをよくする薬を処方し体質改善から取り組みます。ストレスの状態で薬は変わります。

胃弱で中間証から虚弱タイプには、「桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)」を、よりストレスが強く、神経性胃炎や胃潰瘍になりやすい中間証タイプには「柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)」が処方されます。また、実証タイプでストレスが動悸や不整脈となってあらわれる人には「柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」、疲れがたまりがちな人には「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」などが処方されます。

肥満も原因の一つになります。体重が多く瘀血のある人には、「大柴胡湯合桂枝茯苓丸料(だいさいことうごうけいしぶくりょうがんりょう)」を処方します。これは二つの処方を組み合わせた漢方薬で、大柴胡湯で脂肪代謝を促進し、桂枝茯苓丸料で瘀血をとり、血流を促します。

検査で異常がなかったとしても、肥満や胃弱、ストレスが精子を弱らせていることもあります。このような場合は、ぜひカップルで治療を受けましょう。

日常生活のアドバイス

院長先生

腎の衰えは、精子の減少や生殖機能の低下に直結します。睡眠をしっかりとり、疲れをためない生活をこころがけましょう。ストレスがあると、「気」が消耗してしまいます。休みの日には上手に気分転換をして、ストレスをためない生活を心がけましょう。
また、男性は、肉中心の食事や単品料理などを好み栄養が偏りがちです。肥満は瘀血を呼び、瘀血は血行を阻害します。瘀血が十分な精子をつくれなかったり、勃起不全を起こす原因にもなります。バランスのよい食生活を心がけましょう。

漢方による男性不妊治療の初診でも、女性と同様ひとりひとりの体質や状態に合わせた詳しいアドバイスを行っています。あなたの健康状態を丁寧に評価し、それに基づいてオーダーメイドの漢方処方を行います。お気軽にご相談ください。初診のご予約はぜひこちらからどうぞ。



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